君にやっと辿りついた

あまつ空なる人を恋ふとて

乗り越しセンチメンタル

 

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東京で就職した友人が帰省したというので大阪で食事をした。お盆の中日。いつもなら帰宅ラッシュで混み合う時間だけど友人と並んで座れるくらいには空いていた。

 

昔話に花を咲かせていると新幹線の乗り換え案内が聞こえた。動きを止めた電車にちらほらと大きな荷物を持った人が乗り込んでくる。ふと見覚えのあるスニーカーに目が止まった。レ点のようなロゴが特徴的な黒と白のスニーカー。なんとなく見上げるとこれまた見覚えのある顔に心臓が跳ねた。

慌てて顔をそらし友人と会話を続ける。笑う。が、ほとんどうわの空だった。右側に立っているだろう彼が気になって仕方なかった。

 

アナウンスが友人の最寄駅を告げる。また会おうね、年末ね、連絡するね、と手を振った。友人の向こうを見覚えのある横顔が通り過ぎた。

 

 

使い慣れた改札を抜ける。彼はいつもこの駅まで私を迎えに来てくれた。帰りは一人暮らしの私を心配して家まで送ってくれた。

服装に頓着のない彼はいつもダサかった。けれど一度だけ褒めたことがある。

「そのスニーカーいいね」というと「せやろ?お気に入りやねん」とレ点のようなロゴを指差してはにかんだ。

私があげたキャップはどうしただろう。スニーカーと同じロゴの入ったキャップ。サイズを間違えて買ってしまった小さめのキャップをおでこに跡を付けながらも使ってくれた。

 

一瞬だけ見えた横顔は逞ましくなったように見えた。

私はどう見えただろう。元気そうに見えただろうか。楽しそうに見えただろうか。ばっさり切った髪の毛、少しは大人っぽく見えただろうか。

私に気づいただろうか。

 

私はこの街で夢を叶えた。

彼はこの街を出て夢を叶えた。

 

この駅にいても誰も迎えに来てくれないし、誰も送ってくれない。

 

私はもう、1人で帰れる。

 

滲む月に気づかないふりをして一駅前の最寄駅へと歩いた。

 

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乗り越しラブストーリーが好きすぎて深読みしすぎて妄想しすぎてこんなものを書いてしまいました。失礼いたしました。

 

乗り越しラブストーリー ジャニーズWEST(桐山照史/重岡大毅) 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索